雨

憂鬱

雨戸を開けると空の色と心の色が同じになる

いつからだろう

君にとても嫌悪感を抱く様になったのは

幼少時

新しいカッパ、長靴、傘

それだけで僕はヒーローだった

水溜り、かたつむり、雨樋から流れる液体

僕は嬉々として高揚する

雨の音だけで心を躍らせたんだ

青年時

濡れながら自転車で学校に向かう

学校に着いたらあいつとあんな話をして笑うんだ

学校に着けば仲間達との幸せな時間

僕は大きな施設と仲間達に風雨から守ってもらえるんだ

恋い焦がれた女性の制服が濡れている

よく分からないがいつもと違う雰囲気に心がそわそわした

大人になった僕

雨音を聞く度に心がどんどん堕ちていく

底がない暗闇に永遠と堕ちていく

今ではカッパも長靴も僕をヒーローにはしてくれない

水溜りなんて心に残らない

職場には心から笑える仲間もいない

恋い焦がれる女性もいない

どうして君は変わってしまったんだい？

わかってるよ、知ってるよ

変わったのは僕なんだ

ヒーローも仲間も水溜りも全部僕が殺したんだ

ねえ君、僕はどうすればいいの？

いつも君は答えない

そうだ、僕が子供に戻ればいいんじゃないか

そうすれば水溜りも雨樋から流れる液体も生き返る

わかってるよ、知ってるよ

そんな事は出来ないって

雨の日は子供達の為にあるんだね

僕は十分楽しんだよ

後は我慢する

家の前を小さなヒーロー達が歩いて行く

僕の心は堕ちていく

それで良いんだよ